3月13日夜、ドグマ恒例のイベント「SMナイト」が開催された。
会場となった新宿ロフトワンは、満員の観客でぎっしり。司会の浪花乱交監督と倖田李梨が、開幕を宣言する。観客の熱気を鎮めるようにライトが消え暗転すると、ボ〜ンと儚さと寂しさ募るお寺の鐘が会場に鳴り響く。そしてセンチメンタルな音楽が流れる。

ふと司会者の席辺りにスポットライトが当たる。そこには、あやとりをしている幼い姉妹。星月まゆらと七咲楓花だ。楓花の手に巻きついている紐を、力を込めて引っ張る、まゆら。「痛い!痛いよ、お姉ちゃん」と切ない声を上げる楓花を、まゆらは「もうちょっと。もうちょっと我慢するの。指が紫色になるまで」と諭す。足をジタバタさせ「うーっ」とうめく、楓花。今宵の「SMナイト」に、さらに深い陰影を与える二人の掛け合い芝居。楓花が父の書斎で見つけた怖い本の話をする。それが水戸黄門の時代の女囚拷問の本だと、妹に砕いて教えてやるまゆら。
客席の大きな柱にスポットライトが当たり、その前で縛られていく川上ゆうの姿が浮かび上がる。灰色の地味な着物と帯。これは時代劇に出てくる女囚の姿ではないか。
そう。今宵の緊縛プレイを貫くシチュエーションが、女囚拷問なのだ。胸がはだけられ、真っ白な乳房が剥き出しになる。縛師は、TJ組でお馴染みの奈加あきらさん。ゆうの顔面を変形させる。
待ってましたとばかり、客席に現われるTJ。変態おやじふうに「こんなに可愛い顔して、鼻毛が毛深いよ」と、ゆうの羞恥を煽る。奈加さんに鼻フックを掛けられる。ますます儚くなるその顔。鼻の穴が、こよりでくすぐられる。鼻水が垂れる。口の中では涎が糸を引く。
鼻から抜いた鼻水つきこよりをTJが受け取ると、お客さんに渡して味見をさせる。そのお客さんは「酸っぱい」と。ドッと沸く観客席。しかし、ゆうにとっては、その盛り上がりこそが羞恥責めなのだ。思わずくしゃみが出た。切なくなるほど、可愛い。
乳首がつねられ、思わず喘ぎ声を上げる。次は蝋燭責めだ。肩や乳房が真っ赤な蝋で艶やかに染められていく。股を開いて白いショーツの股間を晒し者にするTJ。蝋燭と羞恥の快感が、ゆうを襲っている。
股間にも蝋が滴る。TJは、その股の割れ筋を指でなぞる。指の快感も加わったか、一際高い喘ぎを漏らす。彼女の中から、被虐の魂が抜け出てくるようだ。そして失禁――。

再び暗転。ステージにはスクリーンが下りて来て、TJ監督作の名場面が写し出される。
続いて、「2009年M女軍団」のお披露目に。新メンバーである七咲楓花、川上ゆう、大沢佑香、「SMナイト」5回連続出演で皆勤賞組の日高ゆりあと友田真希、そしてM女軍団の中核である星月まゆらが勢ぞろい。全員、女囚のイメージの灰色の着物姿。大塚ひな、泉まりんら、7人中実に4人の女優さんが引退。ちょっと寂しい気もするが、6人の女優さんに声援と拍手が起こり、一抹の寂しさを吹き飛ばしてくれる。TJ組には欠かすことのできない奈加さんと男優の加藤鷹さん、TJもステージに上がる。

一人一人、想いを込めて挨拶していく。「SMはセックスより深い愛である」と鷹さん。最後はTJが締めた。「今夜集まってくれたのは、究極の変態。世の中デジタル化して、合理性と結末がすべての時代。大事なのはプロセス。そこには無駄なものがいっぱいある。その無駄なものが遊びなんです。遊びも、SMがなくても死にはしないけど、その無駄の中に夢が詰まっているんです」TJの熱い言葉に、シーンと静まり返った客席。その無言こそが、お客さん一人一人の心に伝わった証拠だろう。
柱の前にスポットが当たる。ポツンと一人立っているまゆらのモノローグ。「小学5年生のあの日、私が父の書斎で見つけたのは『女囚拷問の世界』でした…」。
そして拷問の世界を恐ろしく感じつつ、その世界に夢中になっていったこと。いつの頃からか、夜の書斎から鞭の音と母親の甘い切ない叫び声が聞こえてきたことを、淡々と語っていく――。
ステージでは、日高ゆりあの緊縛プレイが始まった。縛られるだけで、もう泣いている。真性ドMの真ん中の真ん中。縄が大好きなゆりあ。口から涎が垂れ、長く伸びる。
TJのドスの効いた重低音の声がどこからか響いてくる。「AV女優やめても、社会に適応できねーだろうが」。「だから応援してください」と、小さく笑いながら半べそかく。TJの皮肉が嬉しいのだ。
何という正式名称か知らないが、幾筋もの深いギザギザの溝がある台に、ゆりあは乗せられる。痛いんじゃないのか!? そんなこっちの心配を他所に、どんどん陶酔の世界にはまっていく。
裾がまくられ、可愛らしい太ももと膝が露出する。太ももの奥には、まぶしいくらいに白いショーツ。太ももの上に、大きな石の板が載せられる。1枚…2枚…3枚。江戸時代の女囚拷問の図。石は、一体どのくらいの重さだろう? 3枚の石の板が縄で縛られる。動く度に、ゆりあの太ももに負荷が掛かる。その負荷で、ますます陶酔していく。
着物がはだけられ、乳房と肩が剥き出しに。石の板が、奈加さんの足で踏みつけられる。すすり泣くゆりあ。でも、表情は恍惚としている。
二本の箸状のものを組み合わせた、さるぐつわのような物が口にかまされる。言わば江戸版のギャグボール。滴る涎。
強制的に半開きにされた口へ、鷹さんが抱えてきた樽の口が突っ込まれ、何やら茶色の液体を飲まされる。たちまち口から液体が溢れ出て、乳房を濡らしていく。
顔にもぶっかけられる。むせて苦悶するゆりあ。
その背中へ、鞭が振り下ろされる。「もっと!」鞭を欲しがる。さらに打ち込まれる鞭。石を抱えたまま台の上で悶える。プレイが終わり、奈加さんや鷹さん、スタッフに介抱されるゆりあの脛には、生々しいギザギサの跡。ステージから降りると、袖で嗚咽を漏らした――。

ステージのスクリーンには、七咲楓花のドグマ初作品『イラマ少女』が写し出される。司会者の二人が、彼女がドグマ専属になったことを紹介する。続いて、TJに連れられ、七咲楓花本人が登場。可愛らしい着物姿は、無邪気な子供の装いにしか見えない。ドグマとの出会い、ドグマの熱意に感銘を受けたことを語る。緊張もしているのだろうが、一言一句に自信も顔を覗かせている。TJは「ドグマの専属新人は売れないジンクスがあります」と会場を沸かせる。しかし「七咲楓花には、理屈抜きで内に秘めたエロがある」と断じた。
緊縛プレイがスタート。立ったまま縛られていく。TJが着物の裾をめくり、スポーツをやっていたという、しなやかだが頑丈そうな足があらわに。真っ白で、妙にソソるものがある。
TJは、自慢の“愛娘”の裾をさらにまくり、白いショーツを丸出しにする。股間のふくらみが、妙に気になってしまう。楓花は、嬉しそうだが、恥ずかしさもたっぷりと。次第に縄酔いしてくる。微笑みを浮かべつつ、口からは涎が垂れる。
そんな楓花に、TJは「縄のコブは幾つがいいの? 答えなさい」と意地悪する。マイクが突き出されるが、楓花は答えられない。奈加さん、TJに言われるまま、楓花を後ろ向きにすると、ショーツずらして半ケツ。それを見てニヤつくTJ。大の大人が二人して少女羞恥。鷹さんが呼ばれる。
最初は着物の上から乳首をつまむ。次に生乳首をつねる。喘ぎ声を上げる楓花。天井からの縄にカラダをもたせ掛ける。そのぶんだけ、股間の縄コブが食い込む。
桃色の声を張り上げ、はっきり高まっていく楓花。また涎が、床に向かって長く糸を引く。そして、達した。鷹さんが手を引くと、一人で揺れている。まだ切れない銀の糸も揺れている。
プレイが終わり、縄が解かれると、どうやら腰が抜けてしまったようだ。ドグマに、M女軍団に、強力な新戦力、現る!
ここで「SMナイト」の第1部が終了。休憩の合間に、星月まゆら、つぼみの美少女が競演したドグマ8周年記念の大作SMドラマ『縄の家』のプロモーションが行われた。ステージには、監督のTJと主演のまゆらちゃん、彼女の母親役の倖田李梨さん、SM雑誌の編集長役の鷹さん、そして縛りを担当した奈加さんが上がり、それぞれの作品に対する思い入れを語ってくれた。

客席に姉妹が立ち、スポットライトが当たる。第2部の開幕だ。二人芝居。楓花は「ねぇお姉ちゃん、私、絶対に大人になんてなりたくないよ」と真剣に言う。そして、生理がきた姉を、母と同じ不潔な大人の女と決めつける。
まゆらには、その理由に思い当たるフシがあった。まゆらが見た、父に拷問されながら「気持いい」と叫ぶ母の姿を、恐らく妹も見たのだろうと――。
ステージでは、大沢佑香が縛られていく。「SMナイト」2回目の登場。その惚れ惚れするような美貌。その顔が儚さに染まり、静かに縄酔いしていく。着物の裾がまくられ、白い太ももがあらわになる。コブ付の縄が白いショーツに食い込む。
「おっぱいも見たいな」。どこからともなく聞こえるTJの声。乳房も剥き出しにされる。ショーツがズリ下ろされ、半ケツになる。あられもない姿を晒し、佑香は縄の快感の世界に、独り入っていく。揺れる。揺れて、足が浮く。そこは重さのない世界。あるのは快楽の重みだけ。佑香は、宙空で達してしまった。
今度は、右足が吊り上げられる。柔らかな股関節だ。ほとんど直線を描く2本の美脚。大きく開いた股間を覆うショーツが邪魔臭いが…これはライブではどうしようもない。
また、独りで揺れている。すると奈加さんは、膝の部分も縛ってしまう。何か悪いことをした子供のように「ごめんなさい…」と謝る佑香。
しかし、こうされては、もう佑香は揺れることができない。股を晒したままの完全縛り。それでも佑香は揺れようとする。揺れたいのだ。
そこへ電マを持った鷹さんが登場。股間に食い込んだ縄のコブの上から電マを当てる。たちまち悲鳴のような喘ぎ声を上げる佑香。
苦悶の表情が悩ましすぎる。また宙に浮く。もしや…と思って見ていたら、ショーツが濡れだした。
濡れ染みがどんどん大きくなっていく。潮を吹いたのだ。ショーツが透けて、とても卑猥だ。鷹さんの電マが離れても、佑香は浮いたまま。空中浮遊したまま、潮吹きの余韻を楽しんでいた――。

司会者席の側に、姉妹が立つ。スポットライトが当たる。楓花「ねぇお姉ちゃん、拷問なんて怖いこと、最初誰が考えたのかな? 外国の人? 日本の人?」と問う。まゆら「外国ではギロチンで首を切ったり、火あぶりがあったりするけど…縄で縛りつけて責めるのは、日本人が考え出したような気がするな」と答える。まゆらは思う。「あんな痛いことをされても、興奮して感じてしまうのが女の体。きっと私の体にも、妹の体にも、母から受け継がれたSMの血が流れているのです」と――。
ステージには友田真希。縛るのは、縄の師であり、もっとも多く真希を縛り、彼女の緊縛美を追求してきた奈加あきら。ライブ活動も頻繁に行っている、最強の縛師と女優のコンビだ。
うなだれた真希。縄酔い。すべてを縄師に任せている。“信頼”が縄を通して行き来しているのかも知れない。この“信頼”のあるか否かが、本物のSMと、一方通行の凌辱との境界線だと、よくTJは言う。そのTJは、また客席から「おっぱい見たい」と子供のようにはしゃぐ。
真希の体が床と平行に、足は頭より高く、吊るされていく。その下には、三角木馬が据えられる。吊りが次第に下降して、真希は三角木馬に騎る格好になる。目を閉じ、かすかな喘ぎを漏らす。額に滲んだ汗が光る。
奈加さんが手を放すと、吊り縄がピンと張り、完全に三角木馬にまたがった。三角の突端がショーツに食い込む。ワレメがもっと裂けちゃうんじゃないかと、余計な心配をしてしまう。
着物の裾がまくられ、お尻が露出する。奈加さんのムチがそのお尻に飛ぶ。たちまち赤く変色する尻肉。しかし、真希の表情は穏やかだ。痛みとは無縁の世界。木馬の食い込みも、ムチも、彼女にとっては快感。「あ〜〜」と震えるような喘ぎ声を上げ、達してしまった。
まだ終わらない、さらにお尻をスパンキングされる。パシッ! パシッ! いい音がする。独りで喘ぐ。股間を木馬に擦り付けているようにも見える。
プレイが終わり、木馬から降ろされるとき、彼女はこっちの世界に戻ってきて、こう言った。「オマンコ、壊さないよ。まだ使うんだから」。そんな言葉で、女優を身近に感じる。これも「SMナイト」のいいところだ。

ここで短いインターバル。ステージに上がったのは、まゆらちゃんと佑香ちゃん。手には『ゲロ浣腸エクスタシー X』のパッケージ。これは「AVグランプ2009」で『X』が配信部門でグランプリに輝いたその報告とプロモーションを兼ねたご挨拶。ダウンロード販売とは言え、堂々S1を破っての勝利。その二人に、大きな声援が飛んだ。
司会者席の側にスポットが当たると、そこにいるのは妹の楓花一人。モノローグが始まる。
「それから何年かのち、お姉ちゃんは、高校を中退して家を出ていっちゃいました。…再会したお姉ちゃんは、AV女優になっていました。しかもSM専門の。いつしか、お姉ちゃんは、幼い日に父の書斎で見た「女囚拷問」の世界へ行ってしまったのです。私もいつかお姉ちゃんみたいなAV女優になりたいと思います。マル」。最後の「マル」が可愛すぎた。客席から優しい笑いが漏れた――。
客席の大きな柱にスポットライトが当たる。縛られているまゆらが照らし出される。縄酔いか「アンアン」と可愛い声が口から漏れてくる。切なくなるような、どこか遠くを見つめるぼんやりした目線。奈加さんがグイグイと縄を締めるたび、顔は儚さを増す。その華奢な肉体が、柱に括りつけられていく。柱をまたぐような格好で、足が浮く。縄が支えている。
裾がまくれ、剥き出しのショーツ。顔に浮かぶ恍惚。もう完全に入っている。深い深い、大好きな縄と戯れる世界に。その格好のまま、柱は静かに1回転。すべての観客に、まゆらの恥態が晒される。
TJの声が飛んできた。「熱い蝋燭、欲しいか?」。「欲しい!」精一杯声を出す、まゆら。「みんなにお願いして」とTJ。「蝋燭…ください!」儚い声を振りしぼる。まず、可憐な乳房へ蝋燭が。一気に興奮が高まり、足でもがく。真っ赤な蝋燭の滴りは、舌にも。そして太ももにも。快感を逃すまいとしているのか、縛られたボディで必死に縮こまる。唇が紅に染まり、乳首が蝋で固められ、太ももに蝋の雫が滴る。「イカしてください」必死に嘆願する。
そして楓花の名前を連呼する。姉の美しい姿を、近くから見上げる楓花。まゆらの乳房に、おなかに、太ももに、鞭が飛ぶ。紅の蝋を肉体から追い払うように。
熱とは違う快感が、まゆらのボディで炸裂する。これがSMなのか!?
姉から妹へ…いや、正しくは先輩の専属女優から後輩の専属女優へ、SMの真髄みたいなものを伝えている。
この「SMナイト」は、その儀式の場でもあった。奈加さんのムチにも力が入る。
「イク〜ッ」震えるような声を上げ、達した。紙吹雪が音もなく、まゆらの吊りを飾る。駆け寄り、まゆらを抱き締める楓花。泣いている。
泣きながら、まゆらに微笑みかける。縄が解かれたまゆらと楓花は再び熱く抱擁――。
フィナーレが始まった。再び「2009M女軍団」の6人と、奈加さん、鷹さん、TJがステージに勢ぞろい。全員が本日の感想を語る。その中から、幾つかをピックアップしておこう。
七咲楓花「先輩のプレイを見て、自分の中で何かが芽生えた。自分も早く、そんなふうになりたい。皆さんと出会えて、本当に幸せです」。彼女の事務所の人が駆け寄り、花束を渡す。感激する楓花ちゃん。
川上ゆう「本当は、鼻フックは嫌いなんです(笑)。先輩のプレイを見たくて、ずっと客席にいました。プレイというより、皆さん楽しんでますね」
大沢佑香「(TJに「M女軍団の救世主だよ」と言われ)M女軍団に花を添えていきたいです」
星月まゆら「女囚の世界も愛がないと描けない。みんな愛があります。みんなMとして頑張ってくれてありがとう。楓花ちゃんは、立派な女優さんになってください。みんなにいっぱい愛を与えられるように頑張ってください」
TJはこんなふうに締めた。「M女軍団で、打倒S1を追及したい」――と。

倖田李梨さんと、応援に駆けつけた堀口奈津美、夏目涼ちゃんもステージに上がり、全員で記念撮影。SMプレイの恍惚の表情からは一変した笑顔、笑顔、笑顔。満足そうな顔がステージに溢れていた。
充実した時間は、駆け足で過ぎていく。こうして4時間の「SMナイト」は、アッという間に終わってしまった。しかし「2009M女軍団」の本日の残像は、この会場を訪れた者のすべての脳裏に、いつまでも記憶されることだろう。